目次
意向表明書
まずは、意向表明書(LOI=Letter of Intentの略)です。
要するに、「あなたの会社の買収を真剣に考えているのでよろしくお願いします」という証明、という感じでしょうか。
結婚で言うと、交際申し込みみたいなものでしょうか(笑)。
内容は、買手から売手に対し、希望する譲渡価格、スキームやスケジュールなどを織り込んだものです。
とはいえ、意向表明書の内容のままで、譲渡契約まで至ることはほぼないですし、法的拘束⼒もない(ノンバインディング方式)が一般的です。
なぜなら、買手はインフォメモしか確認しておらず、意向表明後のデューデリジェンスやトップ面談によって、条件が変更されることは当然織り込む必要があるからです。
もちろん、意向表明書の紙面を作成しなければならないわけではありません。
しかし、それでは、買手が本当に買う気があるのか、売手は不安になってしまいます。
交際宣言もせずに会っていても、結婚する気があるのか?遊びじゃないのか?と不安になるのと同じです(笑)。
そこで、交渉の意思と大まかな条件を紙面で伝えることで、買手の立場を客観的に明確に示すのです。
売手は、意向表明書を受けるにあたって、その後のデューデリジェンスやトップ面談と言った詳細な調査を受け入れる、と腹をくくらなければなりません。
基本合意書
基本合意書を締結し、デューデリジェンスやトップ面談の結果、最終の譲渡契約に向かおう、となった場合に締結するのが、基本合意書(MOU Memorandom Of Understandingの略)です。
買手も売手も譲渡の意思を固め、基本合意書で基本的な条件はお互いに確認して、あとは、細かい条件の取決めだけを譲渡契約で決定しようか、というイメージです。
交際が進んだあとのプロポーズ、という感じでしょうか(笑)
価格やクロージング(譲渡契約締結)の条件、スケジュールなどの取り決めですが、買手が詳細な調査を終えた後ですので、内容はより具体的なものになります。
基本合意書で重要な確認事項は、まず、独占交渉権が設定されているか、ということです。
独占交渉権が設定されている場合、売手は他の買手候補と交渉することができなくなります。
買手の立場からすると、せっかく購入の意思を固めたのに、他の買手に売手を持っていかれては困る、ということです。
とはいえ、譲渡契約に至らなかった場合には、他の買手との交渉できます。
次に、意向表明書は法的拘束力がないのが通常ですが、基本合意書では、法的拘束力を有する条項が入っている場合もあります。
実務上は、とくに中小企業を対象とした「スモールM&A」の場合、基本合意書自体を省略して譲渡契約書を締結する場合も多いです。
譲渡契約書
基本合意書のあとに、細かい事項を詰めて、ついに、譲渡契約書を締結します。
もちろん、基本合意書のあとに、大きな検出事項が見つかってしまい譲渡契約に進まない、という場合もあります。
プロポーズのあとに結婚破棄、というのもありえますので、油断は禁物です(笑)。
譲渡契約書は当然、法的拘束力をもち、裁判になった場合には、譲渡契約書をもとに行うことになります。
さて、譲渡契約書では、たとえば以下のような内容を盛り込みます。
- 譲渡する株式の内容
- 譲渡する価額
- 対価の支払方法
- 譲渡する日
- 契約の変更または解除について
- 買手と売手の義務
- 表明保証
- 契約違反があった場合の損害賠償について
ここで厄介なのが、7.表明保証です。
要するに、「売手はすべての情報を提供しました。M&Aのあとに何か問題があったら、責任をとります」ということです。
どこまで、責任をとらなければいけないんだ、というのが売手にとっての不安だと思います。
もちろん、交渉で嘘をついていたのならば責任をとることは仕方ありません。
では、「買手がM&Aのあとに交渉時に想定していた利益が上げられなかった」というのは売手の責任でしょうか。
基本的には、M&Aはお互いの合意に基づく交渉事です。
強制ではありません。
そうであれば、買手は買収後に利益を上げられないリスクも考慮してM&Aの交渉をするべきであり、基本的には売手には責任はありません。
ただし、引き継ぎをきちんとしない、などの事情があれば話は別で、買手にも責任はあるでしょう。
まとめ
M&Aの契約は、意向表明書 → 基本合意書 → 譲渡契約書 の順に、大ざっぱな約束から、拘束力のある具体的な契約への進んでいきます。
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