トップ面談は、ほぼ「お見合い」です。
売手と買手がお互いに興味があることを話せばいいだけです。
とはいえ、いきなり譲渡金額の交渉をしたり、買手が売手を見下すような発言をするのはご法度です。
目次
トップ面談の位置づけ
意向表明書を締結すると、買手が売手を本格的に調査します。
デューデリジェンスがその一つであり、もう一つがトップ面談です。
デューデリジェンスが第三者による客観的な調査であるのに対して、トップ面談は経営者同士が直接会って相性を確認し、信頼関係を構築する場です。
たとえではなく、ほぼ「お見合い」です。
中小企業のM&Aの場合には、このトップ面談の相性でM&Aがほぼ決まる、といっても過言ではないでしょう。
大手企業のM&Aの場合であれば、経営者と言っても、しょせんは「雇われ社長」です。
株主の意向を踏まえつつ、客観的かつ理論的に譲渡締結の可否を考えなければなりません。
しかし、中小企業の場合、たいていは経営者と株主は一致しており、譲渡契約にあたっては、経営者の一存で感覚的に意思決定することが可能です。
売手の経営者と買手の経営者が実際に会ってみて、「お互いの気が合うから、M&Aをしましょう!」と意気投合すれば、そのまま譲渡契約締結まで突き進むんでしまうのです。
逆に、「生理的に嫌い」という理由だけで、有利な譲渡条件を提示してきた買手との交渉を打ち切る売手の経営者もいます。
では、そのトップ面談では、どのようなことを話すのでしょうか。
売却条件であるとか引継ぎの期間と条件であるとか、交渉における重要事項をトップ面談のは話題にする場合もあります。
もちろん、それも重要で、最終的には契約条件を詰めるために面談をすることもあります。
しかしながら、最初には話題にすべきは、そのような「生々しい」交渉事ではありません。
お互いの「人柄」「会社柄(?)」「将来の夢」について相互に理解して、信頼関係を深めることが重要です。
お見合いでいきなり、「あなたの年収はいくらですか?」と聞かれるとひいてしまうのと同じです。
基本的に、「生々しい」交渉事は、我々、M&Aアドバイザーが裏で根回しをしておきますので、経営者同士では、もっとロマンのあるお話をしてください。
買手から売手への質問
買手から売手に対して、たとえば、以下のような質問をして、売手の人柄や会社の状況を理解します。
- 創業の苦労話
- 事業に対する思い
- 売却に至るまでの経緯
- ビジネスモデル全般
- 売却後の人生設定
- 従業員との関係
売手から買手への質問
逆に、売手から買手に対して、たとえば、以下のような質問をして、買手の人柄や会社の状況を理解します。
- 創業のきっかけ
- 今後の事業展開
- 期待するシナジー効果
- 買収後の中長期戦略
- 経営メンバーについて
- 人生観、趣味など
トップ面談の留意事項
トップ面談の失敗で最も多いのが、買手が売手に対して、「買ってやる」という見下した態度をとってしまうことです。
M&Aは、買手にとっては、事業を拡大するための事業戦略のひとつにすぎないかもしれません。
しかし、売り手にとっては、我が子同然に育ててきた会社をお嫁に出す、そんな人生のハイライトのひとつなのです。
売手に対して必要以上に疑ってかかっていることは、売手にすぐに伝わります。
また、売手の会社のマイナスポイントを正直に話しているときに、買手が「それではダメ」という態度をとると、話している売手からすれば非常に不愉快です。
完璧な売手など、存在しません。
もしも、完璧な売手が存在したとしても、買手候補がたくさん現れ、譲渡価格も吊り上がり購入できません。
現実の売手企業にはなんらかのマイナスポイントがあるのは当然で、買手は譲渡後にそのマイナスポイントを修復できるか、または容認できるか、ということについて検討するべきなのです。
もちろん、トップ面談の結果、買手が購入を見送ることはよくあります。
M&Aは交渉事ですので、仕方ないですし、かまいません。
しかし、その場合であっても、売手に対しては、少なくとも表面上は敬意を示してほしいのです。
そうでなければ、売手が次の買手とトップ面談をしようというモチベーションが下がってしまいます。
こんな屈辱的な思いをするくらいならM&Aなどもうしたくない、とM&Aを取りやめた売手もいました。
このような失礼な買手に対しては、M&Aアドバイザーは二度と案件を持ち込むことはありません。
まとめ
トップ面談は、お互いの相性を確認し、信頼関係を深める「お見合い」です。
中小企業のM&Aでは、このトップ面談で大部分が決まります。
買手は売手への敬意を忘れないでください。
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