最重要資料のひとつ インフォメモ

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実務三郎
買手との交渉に入るときに提示する「インフォメモ」とは何ですか?
貝井

売手企業の具体的で詳細な情報をまとめた紹介資料です。

買手が「インフォメモ」に魅力を感じると、売手の経営者に会ったり、調査(デューデリジェンス)を進めます。

就職活動における「エントリーシート」みたいなものでしょうか。

目次

インフォメモとは?

『インフォメモ』とは、『インフォメーションメモランダム』の略で、『IM』と略す場合もあります。

日本語で「企業概要書」などと呼ぶ場合もあります。

買手を探す場合に、まずはノンネームシートを提示しますが、これは売手を特定させてはいけないので、具体的な情報を記載することができません。

案件化の記事でも説明したように、たとえば、自動車部品製造業で売上高3億円以下、小ロット・低価格で試作品モデルの供給可能なことが強み、というような「概要」はわかっても、どの会社なのかはわかりません。

また、具体的にどういう製品を製造しているか、どのような従業員がいるのか、などはわかりません。

逆に言えば、売手を特定させてはいけない、のです。

なぜなら、ノンネームシートの段階では、多くの買手候補に打診しなければなりません。

買手に興味がない会社に、詳細な情報を提示して、これが漏洩した場合には売手にとって大きなマイナスになってしまいます。

 

一方で、M&Aの交渉に入る、と意思決定をした段階に至る買手の数は限られます。

また、そのような真剣にM&Aを検討する買手にとって、買手の詳細な情報なしに、M&Aの意思決定をすることは困難です。

そこで、NDA(秘密保持契約)を締結して、情報を漏らさないことを条件に、具体的で詳細な買手の情報を提供するのです。

 

インフォメモの具体的内容

インフォメモの内容は、当然ですが、法律で決まっているわけではありません。

「ざっとを目を通して売手の概要がわかり、M&Aの交渉を継続するかどうかの意思決定に資するもの」というのが目安です。

たとえば、ある案件のインフォメモが下記のような内容で、パワーポイントで15~20枚程度の内容でした。

 

  1.  会社概要
  2.  ビジネスモデル
  3.  工場現場
  4.  取引例
  5.  相手先別売上データ
  6.  相手先別仕入データ
  7.  人員データ
  8.  PL実績
  9.  BS実績
  10.  正常収益力
  11.  実態純資産
  12.  セールスポイント

 

当然ですが、ノンネームシートよりも詳細な内容になっています。

これだけの内容があれば、売手の概要が把握できるのではないでしょうか。

大手企業の売却であれば、様々な事業を営んでいるので、もっとぶ厚いインフォメモを作成する場合もあります。

しかしながら、単一の事業を営んでいる中小企業であれば、これくらいの資料で必要かつ充分です。

 

インフォメモの重要性

インフォメモはM&Aにおいて、買手の判断材料として非常に重要です。

就職活動において、すべての学生と面接するわけにはいかないので、エントリーシートである程度絞り込むのと同じです。

いきなり、買手が自分の目と足で、売手を調査することは現実的ではありません。

なぜなら、デューデリジェンス(買収調査)には手間と費用がかかりますし、相手の経営者と面会する(トップ面談)にも手間と時間がかかります。

それでも、売手による調査の結果、M&Aに至れば問題ないのでしょう。

しかし、M&Aに至らなければ、かけた手間と費用が全く無駄になってしまいます。

また、売手にとっても、デューデリジェンスやトップ面談に手間がかかるのは同じです。

そうであれば、M&Aの交渉を進めないのであれば早めに交渉を打ち切った方が、売手と買手のお互いにとってよいのです。

営業において、購入する見込みのないお客様にいくらアプローチしても意味がなく、そうであれば、別のお客様にアプローチした方がよいのと同じです。

 

紙面資料を確認することで、効果的かつ効率的に売手を判断できます。

インフォメモの内容を確認することで、買手は交渉を進めるか判断をします。

逆に言えば、インフォメモに掲載されていない売手の情報は、買手には全く伝わらないのです。

たとえば、買手が売手の得意先に魅力に感じるとしても、それがインフォメモに載っていない場合には、売手には伝わらないのです。

「え?そんな得意先を持っているんなら、言っといてよ。知っていたら、M&Aしたのに。。。」

と、後で買手に言われる状況になるわけです。

とはいえ、買手自身が、すべての売手の調査を進めることは、手間と費用の問題から、現実的ではないことはさきほど説明しました。

いかに売手の魅力が効率的に伝わるインフォメモを作成できるかがアドバイザーの腕の見せ所です。

私も自分の案件のインフォメモを作成するだけではなく、他の売手アドバイザーからインフォメモの作成を依頼されたり、他人が作成したインフォメモを買手アドバイザーとしてみる機会が多々あります。

本当に千差万別です。

このインフォメモでは買手はつかないよな、とか、この会社の強みはそこじゃないでしょ、とか思うこともしばしばあります。

買手アドバイザーの立場で言えば、ライバルの買手が現れにくい方が、成約する可能性が高くなるのでチャンスではあるのですが。。。

インフォメモの留意点

インフォメモで売手がM&Aの交渉を進めるかの判断をするのであれば、売手の都合のよいことだけのインフォメモを作成すればよい、と考えるかもしれません。

また、実際には存在しない魅力をねつ造してしまえば、もっと買手は食いつくかもしれません。

しかし、そのようなことをしても、その後の調査やトップ面談で露呈しますし、その場合にはお互いの信頼関係が崩壊して、最終的なM&A契約締結には至りません。

M&Aが成立したとしても、その後、訴訟に発展することにもなりかねません。

あくまで、目的は「M&A契約の締結」、もっと言えば、M&A後に買手が買収した会社を正常に経営していくことです。

このような目的を鑑みると、必ずしも長所ばかりのインフォメモも考えものです。

 

就職活動で、「サークルの幹事をやっていたので、リーダーシップには自信があります!」とエントリーシートに書いている学生を採用してみたら、実際には、まったく受け身の指示待ちでリーダーシップがない、というのもよくあることでしょう(笑)。

 

まとめ

買手は、詳細な調査に入るかどうかを「インフォメモ」という売手の概要説明書を見て判断します。

インフォメモの内容に買手が興味を持たなければ、交渉は打ち切られるので非常に重要な資料です。

とはいえ、嘘を書くと後々問題になりますし、デメリットを伝えておくことも重要です。

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