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デューデリジェンス(DD)とは?
デューデリジェンスとは、買手がM&Aに関する意思決定を行うに際して、売手の実態を把握し、問題点の有無を把握するために行われる調査のことです。
英語の『Due Diligence(当然の努力)』のことで、「DD」とも略されます。
「会社を買うんだから、相手先のことをチェックくらいするのは当り前でしょ?」というのが、おそらく、もともとの英語での意味だと思います。
日本語で、「買収監査」とか、「買収調査」などと言われる場合もあります。
デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスは、インフォメモで売手の概要を把握したうえで、意向表明書を締結したあとに行われます。
よって、M&A契約締結に向けての、より詳細かつ具体的な調査になります。
デューデリジェンスの目的は様々ですが、主に以下の調査を行うことを目的としています。
- そもそも、買収してもいいのだろうか
- 買収価額は適切か?
- リスクは何だろうか?
- 買収後にどのような経営をしていけばいいのだろう。
たとえば、買手が、売手の大手企業への販売ルートを魅力に感じてM&Aに乗り出したとしましょう。
DDの結果、その大手企業との取引がすでに終了していた、または、そもそもその情報が嘘であった、ということが判明した場合、買手はその買収を取りやめるでしょう。
「デューデリジェンスをしてよかった。あのまま、買収していたら、とんでもないことになっていた。」
と、買手側は思うことになるでしょう。
また、DDの結果、BSに計上されている在庫が、実は陳腐化しており、市場において販売できないことが判明したとしましょう。
この場合には、「在庫の価値がないので、その分、売却価格を引き下げてください」と言って、売手との価格交渉の材料となるでしょう。
DDの結果、売手が、他の会社の借入金について連帯保証をしていることが判明したとしましょう。
この場合には、会社買収後に、連帯保証債務を負うリスクがあることを認識できます。
DDの結果、売手の経営者が引退したあとに、経営を引き継げる人材がいないことが判明したとしましょう。
この場合には、買収後に、買手から経営者を派遣する予定をたてる必要があります。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスの種類も様々ですが、主には以下の4つです。
財務DD |
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ビジネスDD |
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法務DD |
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人事DD |
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これら以外に、システムDDや、環境DDなどがありますが、中小企業の「スモールM&A」では、ほぼ実施されません。
デューデリジェンスの留意事項
デューデリジェンスをどの程度行うかは、買手の任意であり、デューデリジェンスを全く実施しなくても問題はありません。
もちろん、その場合には、買手は買収後に問題が発覚するリスクを受け入れなければなりません。
一方で、デューデリジェンスを細かく実施することもできます。
しかし、その場合には、デューデリジェンスの専門家への報酬が高くなりますし、正直に言って、デューデリジェンスを細かく実施したからといって、すべてのリスクを発見できるわけではありません。
つまり、費用対効果を考えて、デューデリジェンスを実施する範囲を決定しなければなりません。
スモールM&Aの場合には、それほど、細かいデューデリジェンスは必要ないのではないかと考えています。
なぜなら、ビジネスモデルが複雑ではなく、また、トップ面談において、経営者同士が情報交換をすることで、会社の実態が理解できる場合が多いからです。
また、大手上場企業とは異なり、正直に言って、全く「ピカピカ」の中小企業など存在しません。
中小企業において、厳密にコンプライアンス違反やリスクを調査すれば、際限なく検出されてしまい、買収への意欲をなくしてしまいかねません。
ある程度のリスクはつきものだ、という意識でいなければ、中小企業の買収などできません。
しかしながら、スモールM&Aにおいても、財務DDだけは実施することをお勧めします。
大手上場企業は、公認会計士の会計監査を受けており、決算書に間違いがあることなど、ほぼありません。
しかし、中小企業の決算書は、会計監査を受けておらず、税務署対策や銀行対策のために、なんらかの「加工」が施されており、信頼性が高くないのが一般的です。
そのような決算書をそのまま信じて買収をしてしまうと、買収後に大問題となることが少なくありません。
とはいえ、財務DDもやりだすとキリがありません。
最低限のところを、公認会計士などにチェックしてもらうだけでも、その後の安心感は全く違います。
まとめ
デューデリジェンスでは、M&A契約締結に向けて、買手が、売手の財務・ビジネス・法務・人事などを具体かつ詳細に調査します。
細かく調査し出すとキリがないですが、中小企業のM&Aにおいても、財務の最低限のデューデリジェンスは実施しておいた方がよいでしょう。