売手M&Aアドバイザーの買手の見つけ方

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実務三郎
M&Aにおいて、買手をどのように見つけるのですか?
貝井

もちろん、M&Aアドバイザーのネットワークやコネで見つけることがあります。

想定される買手候補のリストを作って持ち掛ける、という方法もあります。

 

目次

買手候補の「ロングリスト」を作成してお声がけ

まずは、教科書的な見つけ方から説明しましょう。

買手候補を抽出した「ロングリスト」を作成して、興味を持ちそうな企業にあたっていく方法です。

流れは以下のようになります。

順番 手順 補足
ノンネームシート(NNS)作成 秘密保持契約締結前に買い手候補やアドバイザーに提示する一枚ものの資料
ロングリスト作成 業種・会社規模・エリア等に分類し20~30社ほどに選定する。
サウンディング お声がけ。ノンネームシートで打診する営業活動
ショートリスト作成 サウンディングの結果を受け、興味を持った数社に絞り込む。
ネームクリア(NC) 興味がある相手先が出てきたら、まずは買手企業を具体的に売手に伝える。
秘密保持契約(NDA)差し入れ 売手-買手、アドバイザー間で締結
インフォメーションメモランダム(IM)提示 会社の沿革、事業概要、過去の財務諸表分析、将来の事業計画、売却条件を記載した詳細な売手の資料を提示

 

「案件化」が完了して、ノンネームシート(売手を特定できない売手の概要説明)を作成したら、買手探しが始まります。

 

まずは、案件化で認識した売手の強みや特徴を踏まえ、売手に興味を持ちそうな企業を20社から30社ピックアップして、「ロングリスト」を作成します。

このとき、帝国データバンクや東京商工リサーチのデータを利用する場合があります。

 

ロングリストにピックアップした買手候補に対して、「こういう会社が売却を希望しているのですが、興味はないですか?」とノンネームシートを持って、お声がけ(サウンディング)をします。

当然ですが、すべての買手候補が興味を持つはずはありません。

「いきなり、何言ってるの?」とあしらわれるのが普通です(笑)。

しかし、一定の確率で興味を持ってくれる会社は現れます。

なかには、「ちょうど、こういう会社を買収したかったんだよ!」と「渡りに船」とばかりに歓迎してくれる会社もあります(笑)。

 

20社~30社に声をかけたのち、興味を持ってくれた数社のリストを「ショートリスト」と言います。

そのショートリストの買手候補と、本格的に交渉に入るかどうかを売手と検討します。

 

このときに、まずは、売手に対して、買手候補の具体的社名を伝えます。

これがネームクリア(名前を明らかにする)です。

そして、売手に、この買手候補と交渉に入るかどうかを判断してもらいます。

なかには、過去に因縁があった会社なので、そこに売却するのだけは嫌だ!と売手が拒否することがあります(笑)。

その場合でも、買手には売手の具体的社名を伝えていないので、問題ありません。

売手に買手候補の社名を伝える前に、買手に売手の社名を伝えることはないのでご安心下さい。

 

買手と売手がお互いの社名を知り、交渉に入ることに合意した場合には、秘密保持契約(NDA Non-Disclosure Agreementの略)を締結します。

これは要するに、お互いに、秘密事項は漏らしません、という内容の契約書です。

アドバイザーと買手や売手も、ネームクリアの前にNDAを締結します。

M&Aにおいては、秘密保持が非常に重要になってきます。

 

次に、買手にインフォメーションメモランダム(インフォメモ/IM)を提示します。

これは別の記事で説明しますが、要するに、『社名を明らかにして売手の説明をした詳しい資料』です。

ノンネームシートはぼんやりした資料でしたが、インフォメモはもっと具体的です。

 

これが、「ロングリスト」を作成して、買手を探す流れです。

 

アドバイザーのネットワークやコネ

現実には、アドバイザーのネットワークやコネだけで、買手候補が見つかる場合も多々あります。

ちなみに、その場合でも、2 ロングリスト作成 3 サウンディング 4 ショートリスト作成 の手順が省略されますが、それ以外の流れは同じです。

 

M&Aアドバイザーをしていると、多くの会社から、「M&Aで会社を買いたい!」と声を掛けられます。

このような「買いたい!」という相談が、「売りたい!」という相談の10倍以上あります。

とはいえ、「買いたい!」と言う会社が、M&Aで会社を買えることはほとんどありません。

なぜなら、ほとんどの会社は、M&Aの準備ができておらず、案件を紹介しても、実際にM&A契約の締結に至ることがないことが、アドバイザーとしての経験上わかっているからです。

しかしながら、一部の会社だけは、実際にM&Aの実行まで進みます。

それは、買いたい会社が明確で、どのような案件を持っていけばいいか、明確な基準を示していて、判断が早い会社です。

 

このような一部の会社や、過去に別の会社を購入した実績のある会社は、「こういう案件があったら、紹介してほしい」とアドバイザーに声をかけています。

さらに、仲間のM&Aアドバイザーとも情報交換することで、買手候補は膨大に膨れ上がります。

ですので、条件にあう案件があれば真っ先に紹介して、そのまま成約に至ることも多いのです。

 

M&Aマッチングサイト

M&Aマッチングサイトが最近増えてきており、確かに多くの買手希望者を集めることが可能です。

しかしながら、現状では、正体不明なブローカーのような業者が多いのも現実です。

相手方が、信頼できるM&Aアドバイザーであるのかどうかの判断が難しい、という点を認識した上で利用するべきでしょう。

 

まとめ

買手候補のリストを作成して声がけをしたり、M&Aアドバイザーのネットワークで買手を見つけます。

 

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