M&Aの真のスタート PMI(事業統合)

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実務三郎
M&Aの譲渡価格も折り合って、譲渡契約を締結したら「終了」ですよね。
貝井

確かに、買手との交渉は終わりです。

しかし、これからがM&Aの本番なのですよ。。。

目次

PMIとは?

PMI(Post Merger Integrationの略)とは、買手が売手を買収した後に、買収検討時に想定していた効果を享受できるように、経営や組織のしくみを整備することです。

買収後も買収前と同じように、売手が独自の経営を維持してバラバラに経営しても構わないのでは?と思うかもしれません。

しかし、そもそも、一般的には、M&Aでは最も高い譲渡価格を提示した買手が、売手を買収することになります。

売手を買収した場合に、最も上手く経営してその効果を享受できると判断したからこそ、買手はそのような条件を提示したわけです。

つまり、買収前の状況のままでは、高額な投資(譲渡価額)を回収できないはずなのです。

よって、買収前よりも、「稼げる」会社にしなければならないのです。

 

とはいえ、売手と買手は譲渡契約締結までは全くバラバラの会社であったのですから、社風も仕事のやり方も何もかもが全く違います。

自社であっても、経営改善で「もっと稼げる会社」にすることは容易ではありません。

それにも関わらず、全く別の会社を経営改善するのですから、その難しさは理解してもらえるのではないでしょうか。

しかも、売手はM&Aによって、社員のモチベーションが低下していたり、キーパーソンが抜けていたりと、M&A前よりも経営力が落ちていることが通常です。

つまり、マイナスからのスタートです。

PMIこそがM&Aの本番なのです。

M&A自体が目的ではありません。

M&Aによって、メリットを享受することが目的なのです。

苦難の道のりをたどって、やっと結婚式までたどり着いてゴールだと思ったら、実は結婚生活のスタートに過ぎなかった、という感じでしょうか(笑)

ドラゴンクエストⅢで、バラモスを倒してエンディングだと思ったら、アレフガルドへ連れていかれた、という感じでしょうか(笑)。

PMIの具体的な施策

PMIの具体的な施策は、たとえば以下の図のような施策になります。

デューデリジェンスの段階から、PMIを検討しておかなければなりません。

逆にいうと、デューデリジェンスの段階で、PMIを企画できなければ、M&A自体も諦めることも検討しなければなりません。

さて、PMIにおいては、やはり、社風や組織の統合に重点が置かれます。

そのために、給与規定を統合する作業であったり、泥臭いところでは、売手側と買手側での食事会を設定して交流を深める、などの施策が行われます。

一方で、重複している資源の調整も行われます。

たとえば、本社スタッフが多すぎるのであれば、リストラをする場合もあります。

また、PMIの効果目標を、客観的に把握できる数値(KPI Key Performance Indicator 業績指標)に落とし込み、その進捗を定期的にモニタリングすることで、M&Aの効果の実現を厳しく追及していきます。

 

スモールM&AにおけるPMIの実態

さて、中小企業の「スモールM&A」においては、もっと泥臭いPMIを展開しなければなりません。

たとえば、大企業におけるM&Aでは、ITに関わるPMIで思いつくところでは、銀行が経営統合するにあたって、使っているシステムが異なっているのをどのように統合するか、というものがあります。

一方で、私が経験した中小企業のITに関わるPMIは、買収先の従業員がエクセルとメールを使えないので、使い方を覚えてもらうための勉強会をする、というものでした(笑)。

 

中小企業においては、事業計画を策定しておらず、月次決算も実施していないのが通常です。

あらゆる場面において、「カンと経験」で経営されており、「数値」による管理はされていません。

まずは、「数値」を収集して管理できるように、経営管理体制を構築しなければなりません。

買収先に丸投げしても、できるわけがありません。

買手から買収先に人材を派遣して、経営管理体制を整備する必要があります。

しかし、通常、本社でルーチンワークをこなせる管理部員はいても、いちから管理体制を構築した経験のある管理部員はまずいません。

PMIが面倒くさいので、経営管理体制がしっかりしている会社だけを買いたい、と思うかもしれません。

しかし、そのような中小企業はまず存在しませんし、仮に売りに出ても争奪戦になります。

あなたに案件が紹介される前に、別の資金力のある買手に紹介されて、あなたのところには回ってきません。

逆に言えば、中小企業の管理体制を構築できる技術があれば、M&Aの選択肢の幅が格段に広がります。

昔の「野村再生工場」のように、多少難のある会社を買収して、自力で立て直すことでしか、スモールM&Aでは成功できません。

 

 

まとめ

M&A契約締結後のPMIこそが、M&Aの真のスタートです。

PMIで、買収先を「もっと稼げる会社」に改善しなければなりません。

スモールM&Aでは、多少難ある中小企業をPMIで立て直すことしか、成功の道はありません。

 

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