

まずは、買手が依頼したDDを担当する専門家から、売手に対して資料が依頼されます。
目次
買手から資料依頼リスト
財務デューデリジェンス(以下財務DD)が始まると、買手が依頼したDDを担当する専門家から売手に対して、資料が依頼されます。
要求される資料依頼リストのサンプルは、以下のようになります。
定款 |
株主総会議事録、取締役会議事録、経営会議議事録、その他営業会議などの重要な会議体議事録(添付資料含む) |
株主名簿 |
株主構成の変遷がわかる資料 |
新株予約権、新株予約権付社債、ストックオプション、株式関連証券等の発行状況の一覧及び、契約書等の関連資料 |
会社案内、パンフレット、主要サービス一覧等の会社・事業概況が分かる資料 |
組織図 |
部署別・雇用形態別の人員数推移がわかる資料 |
役員の他の会社との兼務状況(他の会社の従業員も含む)が分かる資料 |
主な商流・物流・輸送系統が分かる資料 |
営業所、事業所、倉庫、工場等、拠点の一覧 |
保有する法令、条例に基づく許認可の一覧 |
訴訟案件(当事者になりうる可能性のある潜在的訴訟案件、クレーム等含む)の一覧及びその内容がわかる資料 |
業務フローが分かる資料(販売、購買、請求・入金管理、支払、財務会計) |
就業規則、賃金規程、賞与規程、経理規程(細則含む) |
退職金規程・役員退職金規程・退職年金規程 |
会計方針、科目別の記帳処理方法、決算処理手順などが記載された決算マニュアル等 |
会社法計算書類(注記、付属明細を含む)、会社法事業報告 |
合計残高試算表 |
月次試算表(月次損益推移表のような資料) |
勘定科目明細 |
主要取引先・仕入外注先との基本契約書の一覧表 |
賃貸借契約一覧表 |
契約で3年以上継続する、継続している契約、長期納入契約の一覧表 |
主要な契約一覧表(契約書台帳) |
付保状況一覧(保険の種類、対象資産の簿価、保険金額等) |
進行期の予算及び着地見込 |
予実管理資料(予算と実績の差異原因を分析された資料) |
来年度予算・事業計画書(中期経営計画)及び、作成根拠・作成前提が分かる資料 |
設備投資計画(リースによる投資、ソフトウェア投資、修繕費含む) |
取引先別の売上高(上位10社程度)、売上内容、取引条件(価格設定、条件の改定、マージン率、諸掛の負担、支払条件等)がわかる資料 |
売上値引・売上リベート、並びに仕入値引き、仕入リベートの一覧表 |
取引先別の仕入外注高(上位10社程度)、仕入外注内容、取引条件(価格設定、条件の改定、マージン率、諸掛の負担、支払条件等)がわかる資料 |
売上原価、販管費の科目別明細 |
役員報酬の明細(ストックオプション等、インセンティブプランを含む) |
営業外収益、営業外費用の内訳明細 |
特別利益、特別損失の内訳明細 |
営業損益・経常損益に含まれる一時的・非経常的な項目の有無と内容の把握ができる資料 |
特別損益に含まれる経常的な項目の有無と内容の把握ができる資料 |
売上債権にかかる主要な相手先ごとの取引内容、金額、回収サイトがわかる資料 |
売上債権の年齢表(発生年度、相手先、取引内容、金額がわかる資料) |
長期滞留債権、貸倒懸念債権があれば、その内容(発生時期、相手先、取引内容、金額、滞留の理由) |
貸倒損失の実績明細(相手先、取引内容、貸倒理由、貸倒金額) |
貸倒引当金の計算根拠資料 |
売上の期末前後の計上根拠資料 |
商品の棚卸結果の資料 |
簿外になっている在庫がある場合は、当該簿外在庫に係る資料(在庫の種類、数量、単価などがわかる資料) |
在庫管理資料 |
貸付金の内容(相手先、金額)、回収スケジュールおよび回収状況がわかる資料 |
固定資産台帳・固定資産取得明細・固定資産除却明細・減価償却費明細 |
保有する全ての土地・建物の一覧表 |
ファイナンスリース、オペレーティングリース別のリース資産一覧(物件名、リース料、リース期間、未経過リース料)及び割賦購入資産の一覧 |
保有する車両の時価(中古市場価格)及び簿価が分かる資料 |
遊休資産一覧表(リース資産含む) |
対象期間の設備投資の状況がわかる資料(稟議書等) |
過去の拠点(営業所、工場、店舗等)の出退状況がわかる資料 |
保有不動産(土地および建物)の時価評価に係る資料(不動産鑑定評価、固定資産税課税明細書) |
保有する上場株式について株数、簿価が分かる明細、関係会社株式・未上場株式・出資金については保有比率、及び財務状況が分かる資料(直近決算書等) |
役員保険に関する資料一式(残高明細表、保険証券、約款等) |
敷金・保証金等のうち、回収可能性の疑義のある債権の明細及び敷引がある場合に償却スケジュールがわかる資料 |
長期前払費用に係る契約書および償却スケジュールがわかる資料 |
仕入債務にかかる主要な相手先ごとの取引内容、金額、支払サイトが分かる資料 |
支払を留保している仕入債務があれば、その内容(発生時期、相手先、取引内容、金額、留保している理由等)がわかる資料 |
期末日前後に計上された費用に関する請求書 |
賞与引当金(役員および従業員)、退職給付引当金、役員退職慰労引当金の計上根拠及び計算資料 |
退職金制度・年金資産制度の制度概要が分かる資料 |
その他引当金の内容が判明する資料、計算根拠資料 |
返品、値引き、アフターサービス、クレーム等の偶発債務あるいは引当の必要を検討すべき項目についての資料 |
資金繰表 |
預金口座の明細(銀行、支店、預金種別、口座用途、残高等) |
拘束性預金の明細(金額、拘束理由等) |
借入金に関する契約書一式、相手先別明細及び返済スケジュール表 |
保証、保証予約、経営指導念書に関する一覧表及びその他これらに関する資料一式 |
不動産、動産その他の資産に設定された抵当権、質権、譲渡担保その他の物的担保の一覧(登記されていないものも含む) |
過去に労働監督署からの指導、勧告等があった場合は、その内容が判明する資料 |
法人税確定申告書、事業税申告書、住民税申告書 |
納税額の一覧(法人税、住民税、事業税の納税額が一覧できる資料) |
売手側での資料依頼への対応
膨大な量の依頼資料に閉口したかもしれません。
しかも、このリストですら、基本的な「最低限の」依頼資料ですので、状況によってはより多くの資料を求められることもあります。
面倒くさいから、会社売却を止めよう、と思ったかもしれません(笑)。
とはいえ、買手の立場で考えると、リスクを背負って会社を購入するのですから、いろいろ調査したい、というのも仕方ありません。
DDの段階になってから、準備を始めると膨大な手間がかかって間に会わない可能性があります。
M&Aで会社を売却する、と腹を決めたら、コツコツと準備を進めておきましょう。
リストに挙げた基本的な資料は、おそらく、どの財務DDの専門家でも要求してくるはずです。
とはいえ、中小企業においては、そもそも該当する資料が存在しない場合も多いでしょう。
たとえば、「賞与引当金(役員および従業員)、退職給付引当金、役員退職慰労引当金の計上根拠及び計算資料」を要求されても、このような引当金を計上していない中小企業がほとんどです。
そのような場合には、正直に「ありません」と回答すればいいのです。
間違っても、DDのためにわざわざ新規資料に作成する、とかしないようにしてください。
資料依頼リストは、売手アドバイザーが事前に確認します(少なくとも私は確認します)。
存在しない資料や提供しても意味のない資料などを判別してから、買手のDD専門家と協議します。
提出すべき資料を絞り込んでから、売手に資料を準備してもらいます。
中小企業のM&Aの場合、結果として、それほどの量ではなくなるのが通常です。
能力のない売手アドバイザーだと、資料の判別ができず、買手側のDD専門家からのリストを売手にそのまま丸投げしてしまいます。
DD対応に膨大な手間がかかってしまうので、注意しましょう。
まとめ
M&Aの財務DDでは、かなりの量の資料が要求されます。
DDに入る前から、事前にコツコツ準備しておきましょう。