M&Aの支援者たち 売手・買手・仲介アドバイザー

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実務三郎

M&Aの「アドバイザー」とは、何をしてくれるのですか?

アドバイザーなしで、自分たちだけで会社を売買しても問題ないのですか?

貝井

アドバイザーには、「売手」「買手」「仲介」がいます。

アドバイザーなしでM&Aをすることは、法的には問題ありませんが、実質的には難しいです。

目次

不動産仲介業者の役割

そもそも、M&Aアドバイザーはなぜ、必要なのでしょうか。

みなさんにとって、M&Aは身近ではないかもしれませんが、不動産取引であればイメージしやすいのではないでしょうか。

 

もし、あなたが買換えでマイホームを売却しよう、と考えた場合、どこかの不動産仲介業者に相談に行くのではないでしょうか。

そして、不動産会社と売却条件などを考えて、不動産業者が買手候補を連れてきてくれるのを待ちます。

不動産業者が連れてきた買手候補に納得がいけば、売買契約を締結する、という流れです。

 

逆に、マイホームを購入する場合、新築であれば、不動産販売業者から購入するでしょう。

しかし、中古の不動産を購入したい場合には、不動産仲介業者に物件を紹介してもらいます。

そして、紹介された物件の中に興味がある物件があれば、詳しい資料をもらい、内見をします。

そして、気に入れば、売買契約を締結する、という流れになります。

 

この中で、不動産仲介会社はどのような役割を果たしているのでしょうか。

 

1つには、売手と買手を結びつける、という役割があります。

不動産を購入したい場合に、自分だけで、適切な物件を探してくるのは現実的ではありません。

「売りたい人と買いたい人」の情報を持っている仲介業者に依頼して、物件を紹介してもらうことで、選択肢が大幅に増えます。

 

2つ目には、専門知識を用いて、円滑な取引を推進させる役割です。

たとえ売買の相手方が見つかっても、素人同士で契約締結に向かった場合、そもそも、どのような契約をまとめればいいのかわからず、契約に至らない可能性が高いでしょう。

また、契約を締結したとしても、売買後に、取引中にはわからなかった問題が顕在化することも多いでしょう。

そこで、専門家が間に入り、のちにトラブルになりやすいポイントをきっちり押さえたうえで、取引を進めることにより、円滑な取引が可能となるのです。

また、このように、専門家によって、取引の安全性や利便性が担保されていることで、市場に多くの不動産が流入します。

これにより、買手はバラエティ豊かな物件から不動産を選択することができます。

買手が増えることにより、売手も増加します。

これにより、不動産市場全体が活性化するのです。

 

あなたは、不動産取引をした場合に、仲介会社への手数料が高いな、と思ったことはないでしょうか。

自分で不動産仲介会社をやれば、儲かるんじゃないか、と(笑)。

ここで、仲介業者を使わず、自分だけで、売買相手を見つけてきて、取引の安全性を確保することを考えてみてください。

おそらく、膨大な手間暇がかかるはずです。

仲介会社への報酬は、この手間暇が省けることへの対価なのです。

 

M&Aアドバイザーの役割

M&Aアドバイザーの役割も、不動産の仲介業者とほぼ同じと考えていただいてかまいません。

M&Aアドバイザーは、基本的には、多くの売却と購入の希望者の情報を持っており、専門知識を用いて、M&A取引の安全性を担保するために存在するのです。

 

しかし、M&Aは、不動産取引とは少し違うところもあります。

会社という案件の個別性・特殊性が高いことです。

不動産であれば、ある程度、価格の相場観があり、マーケットがあり、過去の取引実績があり、説明書や契約書のテンプレートも法定で決まっています。

しかし、会社というのは、本当に千差万別で、そのためのマーケットも確立できていませんし、説明書や契約書もバラバラです。

その影響により、M&Aアドバイザーには、不動産よりも高い専門能力を問われるのです。

しかしながら、実際には、不動産取引には「宅建士」という資格が必要で一定の能力が求められるのに対し、M&Aでは、なんら資格が必要なわけではなく、誰でもM&Aアドバイザーになることができてしまいます。

つまり、きちんとM&Aアドバイザーを選別しなければ、能力の低いアドバイザーにあたってしまうおそれがあるのです。

 

売手・買手・仲介アドバイザーの具体的役割

さて、具体的なM&Aアドバイザーの役割を見ていきましょう。

 

売手アドバイザー

売手のアドバイザーの役割は、会社を売却したい、と希望する会社さんのために、会社の強みを見出して「案件化」して、買手を探してきて、契約に至るまでサポートすることです。

 

買手アドバイザー

買手のアドバイザーの役割は、会社を購入したい、と希望する会社さんのために、価格の妥当性やビジネス・法律上のリスク、買収の可否などについて助言することで、契約に至るまでサポートすることです。

なお、買手においては、通常、デューデリジェンス(買収監査・調査)などのM&A実務を実施しますが、この作業や料金は買手アドバイザーの役割に含まれないのが通常です。

ただし、適切な専門家をコーディネートすることは可能ですし、別料金でM&A実務を実施するアドバイザーも多いです(私もそのひとりです)。

仲介アドバイザー

仲介のアドバイザーの役割は、売手アドバイザーと買手アドバイザーの役割を同時に行うことです。

つまり、売手と買手の両方をサポートすることです。

業界用語では、「両手」とも言います。

 

ここで、「両方をサポートするって、どっちの利益のために動くの?」と思われたかもしれません。

いわゆる、「利益相反」の問題です。

私が仲介アドバイザーとしてサポートする場合には、中立的な立場でのサポートを心がけています。

「心がけ」とか、そんな曖昧で主観的なもの、信用できない、と思われるかもしれません。

ただ、M&Aアドバイザーも「信用商売」なので、不誠実なことをやっていると、悪い噂が広まって、商売ができなくなります。

私などは、公認会計士なので、とくに信用は大事にしています。

仲介も必ずしも悪いわけではなく、売手と買手のお互いの立場を理解して進めるため、対立が少なく、契約締結までスムーズに進みやすい、というメリットもあります。

ちなみに、上場しているような大手のM&A仲介会社は仲介アドバイザーしかやりません。

 

さて、このようなM&Aアドバイザーですが、法律によって使うことが義務付けられているわけではありません。

実際に、大手企業の中には、最初は買手のM&Aアドバイザーをつけて企業買収を実施していたが、数をこなすにつれて、ノウハウが蓄積され、内製化して経営企画室だけでM&Aを進めている、という会社もあります。

とはいえ、リスクも大きいので、とくに売手側の場合にはアドバイザーをつけた方がよいとは思います。

もちろん、報酬はかかりますが、M&A条件が悪くなるリスクや、M&Aのあとにトラブルが生じるリスク、そもそもM&Aが成立しないリスクなどを考えると、ちゃんとしたM&Aアドバイザーに依頼することは必ずしも高いコストとはなりません。

まとめ

M&Aアドバイザーには、売手・買手・仲介という立場があります。

基本的には、売手と買手を見つけてきて、専門知識を用いて、M&A取引の安全性を担保するために存在します。

その能力は千差万別なので、きちんとしたアドバイザーに依頼することがM&Aの成功のカギです。

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