会社を高く売却する秘訣

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実務三郎
どういう会社が高く売却できるのですか?
貝井
正直、一概には言えませんが、一定の傾向はあります。

 

目次

高く売却できる会社の特徴

一般的に、高く売却しやすい会社と売却しにくい会社の特徴は以下のようになります。

  高く売却しやすい会社 高く売却しにくい会社
業績や財務状況が良好 業績や財務状況が良くない
2 ある程度の規模がある 規模が小さい
3 株式が集約されている 株式が分散している
4 M&Aが活発な業界に属する M&Aが活発でない業界に属する
5 経営者がいなくなっても、会社が運営できる 経営者がいなくなると、会社が運営できない
6 経営が見える化、しくみ化されている 経営が経営者の勘と経験に基づいている

 

1について、儲かっている会社や財務状況のよい会社が高く売れるのはわかりやすいところです。

しかしながら、儲かっているがゆえに、値段が高くなってしまい、かえって買手が見つからない場合もあります。

2について、どうせ手間やリスクを背負ってM&Aを実行するなら、ある程度の規模の効果を享受したい、と考える買手が多いです。

とはいえ、もちろん、あまりに大規模だと、価格もリスクも高くなり、買手が減ってしまいます。

3について、株式は基本的に100%譲渡するのが好ましいです。

従って、株式が分散している場合には、集中させておきましょう。

4について、M&Aが活発な業界であれば、ライバルに取られたくない、と高値で買収する場合が多くなります。

何事も、タイミングです。

たとえば、少し前のドラッグストア業界では、業界再編の流れの中で、再編後の覇権をとるべく激しいM&A合戦が繰り広げられました。

しかしながら、業界再編が落ち着き、業界勢力図が定まった現在では、ドラッグストアの売却はなかなか厳しくなっています。

 

ここまでは、わかりやすいかと思います。

問題は5と6です。

スモールM&Aによくある売手の特徴

以下の中小企業のA社とB社(業績も事業も全く同じです)では、どちらの方が高く売れるでしょうか?

A社 B社
経営者が毎日、早朝から深夜まで会社にいて、営業まわりに精を出している。

売上の半分は、経営者自身のお客様への訪問によるものである。

経営者はほとんど会社に来ず、ゴルフに行っている。たまに会社に来たかと思ったら、昼過ぎには飲みにいってしまう。

会社の売上は、営業部長に任せっぱなしで、営業部長も経営者に呆れている。

 

答えは「B社」です。

なぜなら、M&A後にB社の社長がいなくなっても、B社は今までどおり回るからです。

一方で、A社はM&A後に社長がいなくなることで売上が半分になってしまい、買収のリスクが高まってしまいます。

さきほどの「5 経営者がいなくなっても、会社が運営できる」というのはこのことです。

真面目なA社長の会社より、怠け者のB社長の会社の方が、高く評価されるなんて皮肉なものです。

しかし、A社長が、「目の前の売上をあげる」ことに頑張ったのに対して、B社長は「自分がいなくても回るしくみをつくる」ことを頑張ったのです(たぶん)。

経営者としての本来の仕事はどちらでしょうか?

 

トヨタの社長が、お客様に直接営業に行くことや、工場で自動車を製造することはほぼありません(もちろん、大型案件をトップ営業することはあるかもしれません)。

トヨタの社長の仕事は「経営」であり、現場から挙がってくるデータや報告をもとに、意思決定をすることが仕事です。

はっきり言って、トヨタの社長がいなくなってもトヨタは回ります。

逆に言えば、上場企業の社長は一定期間が経過すれば、交代することが前提です。

社長がいないと会社が回らないしくみにしておくわけにはいかないのです。

もちろん、トヨタの社長は、B社の社長のようにフラフラしているわけではありませんが(笑)。

 

さらに、B社の社長が、営業を「しくみ化」していれば完璧です。

たとえば、営業部長が、月次で売上実績を集計して、相手先別、商品別、営業部員別の営業結果を分析して、分析結果に基づく翌月以降の営業っ戦略を提出する、といったしくみです。

これが、6の「経営が見える化、しくみ化されている」に当たります。

このようなしくみがあれば、M&A後に、「数字」と「しくみ」に基づいて、買手はスムーズに経営を進めることができます。

まあ、B社の社長が、そこまでのしくみを作っているとは思えませんが(笑)。

 

高く売却できる会社にするために

とはいえ、「経営者がいなくなっても、会社が運営できる」「経営が見える化、しくみ化されている」中小企業などほとんどありません。

「経営者がいなくなると、会社が運営できない」「経営が経営者の勘と経験に基づいている」中小企業がほとんどです。

ほとんどの中小企業では、社長であっても「プレイングマネージャー」であることが通常です。

普段はそれでも問題は起こりません。

もちろん、中小企業の限られた経営資源を考えれば、社長が現場に立ち、先頭に立って社員を率いることにも合理性があります。

しかし、ひとたび、経営者が引退を考えて、事業承継やM&Aで経営を他人に引き渡そうとする場合には、「次の経営者が経営を引き継げない」という問題が露見します。

 

「経営者がいなくなっても、会社が運営できる」「経営が見える化、しくみ化されている」会社にすることを、「磨き上げ」と言います。

長い期間をかけてじっくりと「磨き上げ」ることによって、より買手の選択肢が広がり、好条件での会社売却が可能となります。

とにかく、早く準備を始めること、これが会社を高く売却するための最大の秘訣です。

 

まとめ

「経営者がいなくなっても、会社が運営できる」「経営が見える化、しくみ化されている」会社が高く売却しやすい。

売却の準備を早く始めることが、会社を高く売却する最大の秘訣です。

 

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